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http://news.scotsman.com/celebrities/Interview-Liam-Gallagher-musician-.5761962.jp
10年前のリアム・ギャラガーなら、どういう反応をしただろう。2009年、OASISのことは話題に出さないと釘を刺された上でインタビューを受けるのだと聞かされたなら。結局のところ、1990年代のブリットポップを定義づけ、リアム・ギャラガーの存在を世間に轟かせたバンド、OASISとはそういうバンドなのだ。
そして結成から18年だった現在、そのバンドはもうない。今年の8月28日、パリで行う予定だったギグ直前に、リアムはノエル相手にこれまでにないような激しい喧嘩をし、ギグはキャンセルされた。その2時間後、バンドのウェブサイトにノエルから公式発表が出される。
「ちょっと悲しいけど何よりほっとしている。今夜俺はOASISをやめる...(中略)....リアムとはこれ以上一日たりとも一緒にはやっていけない」。
それ以来、ギャラガー兄弟が次にどのような一歩を踏み出すのかを知るヒントや説明はほとんど成されていない。
今日、私はリアムの住むハムステッドにあるパブで一杯やりつつ、リアムと話している。もちろんOASISのことやノエルのこと、分裂騒動については何も聞かないという条件付きだ。それなら何のためにインタビューをするのかって?答えは、リアムのアパレルブランドPretty Greenだ。
最近ではマーク・ロンソンによるカバーで再び脚光を浴びたThe Jamの楽曲にちなんでつけられたPretty Greenは、6月に旗揚げされ、男性向けの帽子、Tシャツ、スカーフといった幅広い分野のカジュアルウェアを取り扱っている。シルクやカシミヤといったさらに質の高い素材、デザインからなるプレミアムラインが今月末にリリースされ、クルーズやエディンバラ、グラスゴーで取り扱われる予定だ。
リアムへどのようにインタビューを行えばよいのか。これは難しい問題だ。37歳で3人の子供を持つ父親でもある彼が、どのような日常生活を送っているのかがまず想像できない。世間での彼のイメージはあまりに現実味がなく、その虚像を守ることは不可能のように思えた。
ノエルは弟のことをかつて次のように表現した。
「失礼で、傲慢で、威圧的で、しかも怠け者だ。あんなに怒ってばかりいるやつも珍しい。まるで世界というスープにフォークで立ち向かおうとしているみたいだ」。
しかしこれだけは言えるだろう。アパレルブランドの宣伝をするとなったら、これまでのようなロックスターな振る舞いは受け入れられないのだ。
心配は無用だった。パブThe Garden Gateの薄暗い角に私と向かい合うように座ったリアムの顔に笑顔は無かった。インタビューの最中も口元に微笑みがよぎることは一度としてなかったが、それでも彼はフレンドリーで、丁寧で、親切で、時に思いやりすらみせた。冗談を交え、逆に私に質問をするが、それでも笑顔を見せようとしない彼を前に、これまでに笑ったことはあるのだろうかと疑問に感じるほどだった。彼は正真正銘の大人で、兄のいう短気な子供じみた面や、メディアが書き連ねた手の施しようの無いトラブルメーカーの要素は微塵も感じられなかった。
「俺には子供がいるんだ。それでちょっとアクセルを緩めるようになったのさ」。このように、リアムは説明した。
「確かに前より落ち着いてる。そういう風に自分が変わるのを恐がるやつは多いけど....」
喧嘩をふっかけるようにあごを前に突き出しぶつぶつとつぶやくと、うるさげに手を振る。
「俺は変わったんだ。良い方向にな」。
間近で見る彼はやっぱりハンサムで、ステージで見るよりも小さかった。くつろいだ様子で、顔色も良い。最近では、早起きをしてハムステッド・ヒースを走り、子供の送り迎えもするという。しかし、たぶん何よりも驚きなのは、このインタビューをミネラルウォーター片手に受けているということではないだろうか。Pretty Greenのパーカーとジーンズに身を包み、髪を短くカットした彼はスタイリッシュな男性だった。しかし、リアムが洋服に興味を持っていたのは今に限ったことではない。
「俺には音楽と同じくらい大事なんだよ」。水をぐいっと飲んで、彼は言う。
「良い曲を書いたとしても、見た目が間抜けじゃあな、この二つは切り離せないぜ、だろ?音楽を聴いてこう思ったバンドならいくらでもいるぜ、『おいおい、これでこいつらのルックスが良かったらよ、良かったら俺達おしまいだぜ』ってさ。それでTVで連中の姿を見て『助かった、こいつらダセえ』。見た目が良くて音楽の才能まであったら何でも出来るよな」。
OASISを批判する意見には、一つの音楽的スタイルに固執しすぎだというものがある。The Stone Rosesやポール・ウェラー、The Beatlesといったアーティスト達に囚われるあまり、時代に応じて変化、進歩することを拒絶しているというのだ。
リアムの作る洋服を批判するにも、そっくりそのまま同じ論法が使えるかもしれない。音楽へのアプローチ同様、リアムは自分の好みを知っているし、知っているものを好きになるのだ。
15年前にOASISに夢中になった若者達は、バケツ帽子にパーカー、クラークスのワラビーシューズを身につけ、バンドを真似したものだが、今では違う。スキニージーンズ、スキニーシャツ、スキニータイ、そしてポインテッドトゥシューズを追う彼らは、リアム言うところの「ビョーキ」な美学を持ち、パーカー、バケツ帽といった90年代要素の強いものに迎合することを嫌う。
それにも関わらずPretty Greenの売れ行きは順調だ。パーカーを含むいくつかの商品は瞬時に完売となった。ファンの期待の高さから、ウェブサイトは公開直後に混線状態となり、プレミアムラインはクルーズのバイイング・ディレクターであるマーティン・レイシーから高い評価を得ている。「あらかたの期待を超えたファンタスティックなコレクション」。
「Pretty Greenは市場に新しい風を吹き込んだ。デザインから細部の構成に至るまでクオリティンの面では、どの大手ブランドとも対等に勝負ができるレベルにある。これまでの有名人によるコラボレーションとは違い、世潮に流されることなく存在を主張し続けることだろう」。
リアムはファッション業界にはあまりいない人物だ。本人曰く、前妻パッツィと一緒に一度だけファッションショーに出演したことがあるそうだ。
「危うくつまみ出されそうになったぜ。俺向きじゃねえな。シャンパンがぶ飲みしてダベるんだろ?ただの服じゃねえか、なあ、結局はそうだろ」。
彼には、人の目をひきつける力がある。話すときもジェスチャーは大きく、席を立って歩き回り、時には熱くなって飛び跳ねることすらある。その日履いていたポニースキンのシューズに話を向けると、突然立ち上がり、片足をテーブルの上に力強く置くと、抱擁を求めるように私に両腕を差し出した。ハグを受けれるものなら受けてみろ、そうでなければさらなる褒め言葉を求めているかのように。
「イヴサンローランだよ」。全ての子音にアクセントを置いて、誇らしげに言った。
「最高だよな。これを履いて子供達を学校に連れて行った時の周りの反応を見せてやりたいぜ。『お前のパパ、フリントストーンズの靴履いてるのかよ!』ってさ」。
私は、スコットランドについて彼に質問してみた。グラスゴーのKing Tut's Wah Wah HutでOASISを見て感銘を受けたCreation Recordsの共同経営者アラン・マッギーと、1993年に契約を結んだ地だ。
「スコットランドはマジ最高だぜ、大好きだ」。リアムは前かがみになっった。
「観客の盛り上がりは一番だ。みんないつでもクールだし、酒の飲み方ってのを心得ている。俺ほどじゃねえけどさ、でも.....良い連中だよ。マーズ・バーはそこまで馴染めねえけどな」。揚げマーズ・バーが嫌いなのか頭をいらだたしげに振ると、リアムは近くのテーブルでチップスを食べていたマネージャーを指差した。
「スティーヴ、あそこじゃ何を酒のつまみにするんだっけ、チーズか?何だった?変なのがわんさかあったよな、チップスとかチーズ付きでグレイビーのかかったやつとか、なあ?」。
口の中をチップスで一杯にして、肩をすくめるスティーヴから私に目を戻したリアムは、まるでこの国のおかしな食生活の原因は私であるかのように、疑うような視線を送ってきた。
背後にある房つきのランプシェイドにとんとんと頭を当てている。大きく足を広げて座り、ハエを狙って叩く動作も心ここにあらずという様子だ。彼にとって、名声とは何なのだろうか。あなたはブリティッシュミュージック界の顔でしょう。リアムは眉間に深くしわを寄せた。
「有名かどうかなんて俺には意味ねえよ。結局は、TVとかに登場するかどうかってことだろ。俺はバンドに...」。
そこで彼はふと黙り込み、すぐに訂正をした。
「俺はこれまでバンドで音楽を作ってきた。それだけのことさ。名声を追い求めるやつなんてビョーキだぜ」。
短期的な見通しとしては、「Pretty Greenに全力を注ぐ。家でのんびりして、しばらく音楽からは離れる。そして1月後くらいから何かを始めるよ、様子を見ながらな。OASISじゃない、他の何かを。でも今は少し音楽はお休みするよ。どんなに時間が経っても、俺はOASISがなくなったことを寂しく思うだろう。俺のものだったんだからな、わかるだろ?俺自身だったんだから。でも結局は単に看板でしかない。俺は今でも俺だし、今からでも何かを始めることはできる。俺の中に音楽はある。それを無駄にすることはしないけど、しばらくは俺達みんなで様子を見つつやって行くよ。ひでえもんになるかもしれねえけど、やってみなきゃわかんねえだろ」。
音楽業界での具体的な計画はこれ以上聞くことは叶わなかったが、新しい年に戻ってくることを、そしてその時は「OASISではなく」、ソロでもないことを、リアムは繰り返し強調した。
「OASISから完全に離れることが良いことなんだよ。ソロはやりたくない。俺には向かねえからな。バンドをやりたいんだ。でも今の時代何でもできるからな。何をやるかな。でもロックンロールであることは間違いないさ」。
新しい境地を開拓するチャンスはあるのだろうか。
「もちろんさ。でも今すぐに始めるよりは、少し世間から離れた方がいいと思うんだよ。軽いことじゃねえだろ、OASISってさ、少し寝かせてみんなにこの状況に慣れてもらって、もちろん俺達も慣れる必要がある。でもいづれにしてもファッキンクールな何かを作り出すと思うぜ。一夜漬けのクソみてえなのは出さない」。
もともとリアムが開けっ広げな性格であることを考えても、ここまで話に抑制を効かしていることに私は感心していた。スティーヴが近くにいなかったら、もっと突っ込んだ話が出来るのではないだろうか。できたとしても、3年間喧嘩し続けている兄への辛辣な言葉が出てくるだけなのか。二人の仲は昔から一瞬即発なものだったが、今では話すことすら滅多にないという。OASIS分裂の前には、ツアー中の移動は別々になり、ステージの上で会うのみとなった。緊張関係、なんてものではない。
「いちおうの礼儀で、Pretty Greenの服をいくつかあいつにあげたんだ。そしたらあいつはそれを受け取ったんだ」。リアムの声音には怒りが滲み出ていた。
「ムカついたね、俺の顔に投げ返すべきだろ、話もしねえ仲なのによ。なのに受け取りやがった、それできっとゴミ箱にでも突っ込んだんだろうさ」。
苛立った様子で口をつぐむ。自分の中でねじを巻いているのだ。そして再び話し始める。
「彼女が出かけている間にでも家で着けたりしているかもしれない。でも帰ってきたら脱ぐのさ、なんせ尻にひかれてるからな」。
そう言うとふてくされたようにリアムは拳を突き上げると、親指を下に向けた。
しかしこの愚痴を除いては、この分裂騒動に関しての話題にも落ち着いた様子で話し、考えを切り替えるのには全然時間を要しなかったと答えた。今は引越しの最中で忙しく、子供達は夏休みが終わって学校に戻り、愛するマンチェスター・シティも順調に勝ち上がり、「気分を和らげて」くれるのだそうだ。もし将来について悩み苦しんでいたとしても、彼はその不安を外には出さないのだろう。
たぶん、生傷は触れるにはまだ早く、リアムはまだ変化を十分には受け入れておらず、これからのことについて決断を下すには至らないのかもしれない。20年近く経って突如離婚するカップルのように、OASISの旅は全てを費やしてきた旅だった。だから、私は将来を尋ねられても曖昧な答えしか返すことの出来ないリアムを責めることはできなかった。
長い目で見た時、Pretty Greenは彼の生活の中心となっていくのだろうか。リアムの答えは揺るぎなかった。
「No」。
そしてすぐに付け加える。
「なるかな。うん、でも音楽みたいにってこと。音楽と洋服が中心だよ、それは間違いない」。
http://news.scotsman.com/celebrities/Interview-Liam-Gallagher-musician-.5761962.jp
10年前のリアム・ギャラガーなら、どういう反応をしただろう。2009年、OASISのことは話題に出さないと釘を刺された上でインタビューを受けるのだと聞かされたなら。結局のところ、1990年代のブリットポップを定義づけ、リアム・ギャラガーの存在を世間に轟かせたバンド、OASISとはそういうバンドなのだ。
そして結成から18年だった現在、そのバンドはもうない。今年の8月28日、パリで行う予定だったギグ直前に、リアムはノエル相手にこれまでにないような激しい喧嘩をし、ギグはキャンセルされた。その2時間後、バンドのウェブサイトにノエルから公式発表が出される。
「ちょっと悲しいけど何よりほっとしている。今夜俺はOASISをやめる...(中略)....リアムとはこれ以上一日たりとも一緒にはやっていけない」。
それ以来、ギャラガー兄弟が次にどのような一歩を踏み出すのかを知るヒントや説明はほとんど成されていない。
今日、私はリアムの住むハムステッドにあるパブで一杯やりつつ、リアムと話している。もちろんOASISのことやノエルのこと、分裂騒動については何も聞かないという条件付きだ。それなら何のためにインタビューをするのかって?答えは、リアムのアパレルブランドPretty Greenだ。
最近ではマーク・ロンソンによるカバーで再び脚光を浴びたThe Jamの楽曲にちなんでつけられたPretty Greenは、6月に旗揚げされ、男性向けの帽子、Tシャツ、スカーフといった幅広い分野のカジュアルウェアを取り扱っている。シルクやカシミヤといったさらに質の高い素材、デザインからなるプレミアムラインが今月末にリリースされ、クルーズやエディンバラ、グラスゴーで取り扱われる予定だ。
リアムへどのようにインタビューを行えばよいのか。これは難しい問題だ。37歳で3人の子供を持つ父親でもある彼が、どのような日常生活を送っているのかがまず想像できない。世間での彼のイメージはあまりに現実味がなく、その虚像を守ることは不可能のように思えた。
ノエルは弟のことをかつて次のように表現した。
「失礼で、傲慢で、威圧的で、しかも怠け者だ。あんなに怒ってばかりいるやつも珍しい。まるで世界というスープにフォークで立ち向かおうとしているみたいだ」。
しかしこれだけは言えるだろう。アパレルブランドの宣伝をするとなったら、これまでのようなロックスターな振る舞いは受け入れられないのだ。
心配は無用だった。パブThe Garden Gateの薄暗い角に私と向かい合うように座ったリアムの顔に笑顔は無かった。インタビューの最中も口元に微笑みがよぎることは一度としてなかったが、それでも彼はフレンドリーで、丁寧で、親切で、時に思いやりすらみせた。冗談を交え、逆に私に質問をするが、それでも笑顔を見せようとしない彼を前に、これまでに笑ったことはあるのだろうかと疑問に感じるほどだった。彼は正真正銘の大人で、兄のいう短気な子供じみた面や、メディアが書き連ねた手の施しようの無いトラブルメーカーの要素は微塵も感じられなかった。
「俺には子供がいるんだ。それでちょっとアクセルを緩めるようになったのさ」。このように、リアムは説明した。
「確かに前より落ち着いてる。そういう風に自分が変わるのを恐がるやつは多いけど....」
喧嘩をふっかけるようにあごを前に突き出しぶつぶつとつぶやくと、うるさげに手を振る。
「俺は変わったんだ。良い方向にな」。
間近で見る彼はやっぱりハンサムで、ステージで見るよりも小さかった。くつろいだ様子で、顔色も良い。最近では、早起きをしてハムステッド・ヒースを走り、子供の送り迎えもするという。しかし、たぶん何よりも驚きなのは、このインタビューをミネラルウォーター片手に受けているということではないだろうか。Pretty Greenのパーカーとジーンズに身を包み、髪を短くカットした彼はスタイリッシュな男性だった。しかし、リアムが洋服に興味を持っていたのは今に限ったことではない。
「俺には音楽と同じくらい大事なんだよ」。水をぐいっと飲んで、彼は言う。
「良い曲を書いたとしても、見た目が間抜けじゃあな、この二つは切り離せないぜ、だろ?音楽を聴いてこう思ったバンドならいくらでもいるぜ、『おいおい、これでこいつらのルックスが良かったらよ、良かったら俺達おしまいだぜ』ってさ。それでTVで連中の姿を見て『助かった、こいつらダセえ』。見た目が良くて音楽の才能まであったら何でも出来るよな」。
OASISを批判する意見には、一つの音楽的スタイルに固執しすぎだというものがある。The Stone Rosesやポール・ウェラー、The Beatlesといったアーティスト達に囚われるあまり、時代に応じて変化、進歩することを拒絶しているというのだ。
リアムの作る洋服を批判するにも、そっくりそのまま同じ論法が使えるかもしれない。音楽へのアプローチ同様、リアムは自分の好みを知っているし、知っているものを好きになるのだ。
15年前にOASISに夢中になった若者達は、バケツ帽子にパーカー、クラークスのワラビーシューズを身につけ、バンドを真似したものだが、今では違う。スキニージーンズ、スキニーシャツ、スキニータイ、そしてポインテッドトゥシューズを追う彼らは、リアム言うところの「ビョーキ」な美学を持ち、パーカー、バケツ帽といった90年代要素の強いものに迎合することを嫌う。
それにも関わらずPretty Greenの売れ行きは順調だ。パーカーを含むいくつかの商品は瞬時に完売となった。ファンの期待の高さから、ウェブサイトは公開直後に混線状態となり、プレミアムラインはクルーズのバイイング・ディレクターであるマーティン・レイシーから高い評価を得ている。「あらかたの期待を超えたファンタスティックなコレクション」。
「Pretty Greenは市場に新しい風を吹き込んだ。デザインから細部の構成に至るまでクオリティンの面では、どの大手ブランドとも対等に勝負ができるレベルにある。これまでの有名人によるコラボレーションとは違い、世潮に流されることなく存在を主張し続けることだろう」。
リアムはファッション業界にはあまりいない人物だ。本人曰く、前妻パッツィと一緒に一度だけファッションショーに出演したことがあるそうだ。
「危うくつまみ出されそうになったぜ。俺向きじゃねえな。シャンパンがぶ飲みしてダベるんだろ?ただの服じゃねえか、なあ、結局はそうだろ」。
彼には、人の目をひきつける力がある。話すときもジェスチャーは大きく、席を立って歩き回り、時には熱くなって飛び跳ねることすらある。その日履いていたポニースキンのシューズに話を向けると、突然立ち上がり、片足をテーブルの上に力強く置くと、抱擁を求めるように私に両腕を差し出した。ハグを受けれるものなら受けてみろ、そうでなければさらなる褒め言葉を求めているかのように。
「イヴサンローランだよ」。全ての子音にアクセントを置いて、誇らしげに言った。
「最高だよな。これを履いて子供達を学校に連れて行った時の周りの反応を見せてやりたいぜ。『お前のパパ、フリントストーンズの靴履いてるのかよ!』ってさ」。
私は、スコットランドについて彼に質問してみた。グラスゴーのKing Tut's Wah Wah HutでOASISを見て感銘を受けたCreation Recordsの共同経営者アラン・マッギーと、1993年に契約を結んだ地だ。
「スコットランドはマジ最高だぜ、大好きだ」。リアムは前かがみになっった。
「観客の盛り上がりは一番だ。みんないつでもクールだし、酒の飲み方ってのを心得ている。俺ほどじゃねえけどさ、でも.....良い連中だよ。マーズ・バーはそこまで馴染めねえけどな」。揚げマーズ・バーが嫌いなのか頭をいらだたしげに振ると、リアムは近くのテーブルでチップスを食べていたマネージャーを指差した。
「スティーヴ、あそこじゃ何を酒のつまみにするんだっけ、チーズか?何だった?変なのがわんさかあったよな、チップスとかチーズ付きでグレイビーのかかったやつとか、なあ?」。
口の中をチップスで一杯にして、肩をすくめるスティーヴから私に目を戻したリアムは、まるでこの国のおかしな食生活の原因は私であるかのように、疑うような視線を送ってきた。
背後にある房つきのランプシェイドにとんとんと頭を当てている。大きく足を広げて座り、ハエを狙って叩く動作も心ここにあらずという様子だ。彼にとって、名声とは何なのだろうか。あなたはブリティッシュミュージック界の顔でしょう。リアムは眉間に深くしわを寄せた。
「有名かどうかなんて俺には意味ねえよ。結局は、TVとかに登場するかどうかってことだろ。俺はバンドに...」。
そこで彼はふと黙り込み、すぐに訂正をした。
「俺はこれまでバンドで音楽を作ってきた。それだけのことさ。名声を追い求めるやつなんてビョーキだぜ」。
短期的な見通しとしては、「Pretty Greenに全力を注ぐ。家でのんびりして、しばらく音楽からは離れる。そして1月後くらいから何かを始めるよ、様子を見ながらな。OASISじゃない、他の何かを。でも今は少し音楽はお休みするよ。どんなに時間が経っても、俺はOASISがなくなったことを寂しく思うだろう。俺のものだったんだからな、わかるだろ?俺自身だったんだから。でも結局は単に看板でしかない。俺は今でも俺だし、今からでも何かを始めることはできる。俺の中に音楽はある。それを無駄にすることはしないけど、しばらくは俺達みんなで様子を見つつやって行くよ。ひでえもんになるかもしれねえけど、やってみなきゃわかんねえだろ」。
音楽業界での具体的な計画はこれ以上聞くことは叶わなかったが、新しい年に戻ってくることを、そしてその時は「OASISではなく」、ソロでもないことを、リアムは繰り返し強調した。
「OASISから完全に離れることが良いことなんだよ。ソロはやりたくない。俺には向かねえからな。バンドをやりたいんだ。でも今の時代何でもできるからな。何をやるかな。でもロックンロールであることは間違いないさ」。
新しい境地を開拓するチャンスはあるのだろうか。
「もちろんさ。でも今すぐに始めるよりは、少し世間から離れた方がいいと思うんだよ。軽いことじゃねえだろ、OASISってさ、少し寝かせてみんなにこの状況に慣れてもらって、もちろん俺達も慣れる必要がある。でもいづれにしてもファッキンクールな何かを作り出すと思うぜ。一夜漬けのクソみてえなのは出さない」。
もともとリアムが開けっ広げな性格であることを考えても、ここまで話に抑制を効かしていることに私は感心していた。スティーヴが近くにいなかったら、もっと突っ込んだ話が出来るのではないだろうか。できたとしても、3年間喧嘩し続けている兄への辛辣な言葉が出てくるだけなのか。二人の仲は昔から一瞬即発なものだったが、今では話すことすら滅多にないという。OASIS分裂の前には、ツアー中の移動は別々になり、ステージの上で会うのみとなった。緊張関係、なんてものではない。
「いちおうの礼儀で、Pretty Greenの服をいくつかあいつにあげたんだ。そしたらあいつはそれを受け取ったんだ」。リアムの声音には怒りが滲み出ていた。
「ムカついたね、俺の顔に投げ返すべきだろ、話もしねえ仲なのによ。なのに受け取りやがった、それできっとゴミ箱にでも突っ込んだんだろうさ」。
苛立った様子で口をつぐむ。自分の中でねじを巻いているのだ。そして再び話し始める。
「彼女が出かけている間にでも家で着けたりしているかもしれない。でも帰ってきたら脱ぐのさ、なんせ尻にひかれてるからな」。
そう言うとふてくされたようにリアムは拳を突き上げると、親指を下に向けた。
しかしこの愚痴を除いては、この分裂騒動に関しての話題にも落ち着いた様子で話し、考えを切り替えるのには全然時間を要しなかったと答えた。今は引越しの最中で忙しく、子供達は夏休みが終わって学校に戻り、愛するマンチェスター・シティも順調に勝ち上がり、「気分を和らげて」くれるのだそうだ。もし将来について悩み苦しんでいたとしても、彼はその不安を外には出さないのだろう。
たぶん、生傷は触れるにはまだ早く、リアムはまだ変化を十分には受け入れておらず、これからのことについて決断を下すには至らないのかもしれない。20年近く経って突如離婚するカップルのように、OASISの旅は全てを費やしてきた旅だった。だから、私は将来を尋ねられても曖昧な答えしか返すことの出来ないリアムを責めることはできなかった。
長い目で見た時、Pretty Greenは彼の生活の中心となっていくのだろうか。リアムの答えは揺るぎなかった。
「No」。
そしてすぐに付け加える。
「なるかな。うん、でも音楽みたいにってこと。音楽と洋服が中心だよ、それは間違いない」。
