静かな話し方と抑えた佇まい、アンディ・ベルはどこまでも謙虚なベースプレイヤーだ。

ビートルズで言えばジョージ・ハリソンのように、2人の喋りすぎるくらい喋るバンドメンバーのおかげで影のような存在となっている彼。しかしそれは才能のないことを意味するのではもちろん、ない。そしてこの点でもハリソンに重なるのだが、アンディは、ニューアルバム「Dig Out your Soul」に収められた自身の曲「The Nature Of Reality」でもうかがえるように、常に理論を追求しているのだ。

「空間と時間、今この時この場所にいるということ、それは君の心にしかないんだ」。

アンディは、さりげない顔をしてジョークを飛ばす男でもある。一見シリアスな面持ちをしてながら、質問に対する答えの最後を含み笑いで締めるのだ。バンド唯一の南部出身であり、他のメンバーと比べて勤勉なイメージのする身なりをした彼は、OASISの中でその位置を守っている。

「2人の子供がいて落ち着いた生活を送る38歳の一人の男として」。アンディはそう話した。

「僕は、ベースプレイヤーによくはまってると思うよ」。

OASISのめまぐるしい活動を再び始めるということで、今どのような心持ですか?

アンディ:まるで・・・そうだな・・・楽観的に構えて良いんだけど、覚悟は必要なんだよ。再びツアーに出ることは待ち望んでたことだし、最高さ。でも、数年間分のエネルギーを全て費やすことになる。それでも素晴らしいことではあるよね。

大勢の人々を前に演奏することを考えると、ナーバスになったりはする?

アンディ:ギグの前は毎回緊張するよ。いつもそんな感じ。吐くまではしないけど、でも何分かは(深くため息をつく)、わかるだろ、気持ちを落ち着かせなきゃならない。

ということは、ツアー最初のギグは、いつも調子が悪いということ?

アンディ:いやいや、そんなことはないよ。しっくり来ないなあって思うことが時々あるだけ。最初のギグはたいていOKさ、やっぱり気持ちも盛り上がってるからね。もっと大きなギグとか、位置的に重要なギグとか、そういった時にナーバスになっちゃうんだよ。

ツアーに出て、ニューアルバムの新曲をライブで演奏することについてはどう思う?

アンディ:そう、このアルバムには本当に満足してるんだ。完璧だと思うよ。本当にそう思う。これこそ僕が目指してたところさ。今の僕達は考えが完全に一致してると思うんだ。今回のアルバムの仕上がりをみんな心から気に入ってるし、新曲も本当に気持ちにはまるんだよ。これからもっと好きになっていくと思う。というのも、リハーサル中に、ノエルが新曲のいくつかをアコースティックで弾いていたんだけど、とても良いアレンジだと思ってね。どの曲も素晴らしいよね。

ギグのセットリストを変えてみたいとは思わない?

アンディ:もう少し変化を与えたいとは思うよ。でも僕達には決まったセットリストというものがあるんだ、1曲や2曲は変わるだろうけど、じっくり戦略的に練ったセットリストを続けるのが僕達としては上手く行くみたいなんだよ。

今のOASISはメンバー全員でバンドを動かしている感じなのでしょうか?

アンディ:ああ。チーム体制だね。でも明確なリーダーのいるチームだよ。ノエルが舵を取ってるのさ。そういう役割が必要なんだ、僕が思うに。じゃないと潰 れてしまう。僕達は方向性は決められているけど、その中では思う存分自由にやっていいんだ。あらゆる面でクリエイティブに表現していいのさ。居心地が良い よ。

ノエルの考えが間違ってると思った時、彼を説得することはできます?

アンディ:うーん・・・それはノエルの機嫌によるよね。それと彼がどれだけその考えに入れ込んでいるかってこともかな。つまり、ノエルが自分のやってるこ とについて意見を求めて来る時っていうのは、自信が持てない時ってことだろう。でもほとんどの場合、彼は自分の考えをすでに持っていて、何をしたいのかも わかってるのさ。僕達全員、自分の曲については譲れないところがあるんだよね。曲を書いた時点で、作品も出来上がってると言っていい。その楽曲をどういう風に仕上げたいのかも頭に描かれているんだ。ノエルが寛大にみんなの意見を聞き入れることもあれば、そうじゃない時もある。そこを読めるかどうかは経験次第だね・・・それはノエルに限らず言えることだけど。

曲を作る際にはやはり、ある程度のクオリティが必要だと感じますか?

アンディ:もちろん僕が書く曲は全て最高だよ!ああ、もちろん、本当に自信の持てる作品を作る必要はあるね。僕には未完成の曲がたくさんあるんだ。気に入ってはいるけど、完全な形になっていないものがね。たとえば「Quick Peep」みたいなのは、たくさんあったデモの最後の方に入れていたちょっとしたメロディだったんだけど、みんなが「これこそ俺達が求めてたものだ」って 受け入れてくれた。だから途中までしか進んでないアイディアも、完成品と同じくらいのポテンシャルを持ってるものなんだよ。曲の質というと、また別の問題だね。このアルバムに入ってるゲムの曲があるだろ。あれはゲムが、断片的なインストゥルメンタルミュージックとしてデモを作ってたもので、それをたまたまノエル が「何だこれは?」と耳に止めたのさ。ゲムは「ちょっと作ってみたんだよ」と答えると、ノエルは---確かこう言ったと思う---「ちゃんとした形にして みたら?メロディと歌詞を書いてみろよ」と言ったんだ。それであの曲が出来たのさ。未完成のものがいつでもあるんだ。
なぜって僕達はいつでもギターを弾いてるんだからね、今リアムがはまってるみたいに。ギグの出番を待ちながら、食事を待ちながら、時間が空いた時はいつでも。そしてリアムの前を通り過ぎながら「おお、そのメロディ良いね。何て曲?」とか声をかけたりさ。リアムはいつも新しい曲を弾いてる。で、一度仕上がったら二度と人前で弾こうとしないんだ。

「OASIS向きじゃない」と考え直した曲のなかでも、他の人が聴けばボツにするべきじゃないと思うような素晴らしい曲もあるのでは?

アンディ:いや、OASISに合う曲かどうかはわかってるつもりだ。熟知してるつもりだよ。そういう曲に時々限界を感じることもある。例えば、僕が最初に OASISのために書いた曲「Thank You For The Good Times」は、典型的なOASISの曲だったけどやっぱり先が読めた。「OASISらしい曲」以上になれなかったんだ。一方「Turn Up The Sun」、あの曲は僕がバンドのために書いたベストチューンだけど、OASISらしさはちっともなかった。静かなイントロから始まって、だんだんと盛り上 がっていく。とても自由で、可能性に満ちていたのは、OASISらしくしようと無理していないからだ。だからどんどん曲が良くなっていったのさ。

かつてあなたはスウェーデンで暮らしていたということですが、現在は他のメンバーと同じようにロンドンにお住まいですよね。他のメンバーと生活拠点を近しくすると、やはり関係も違ってくるものでしょうか?

アンディ:同じ街に住んでるってのは良いよ。うん、最高だね。

近くに住んでると、望まない時の訪問もあるということでは?

アンディ:そう、ゲムの家の近くに住んでるんだけど、今度はリアムの近所にでも引っ越そうかな。でもいつでも他のメンバーのところに行けるっていうのはやっぱり良いよね。ゲムとはよく付き合いがあるし---本当に仲良くしてもらってるよ。


2人は今でもバンド内で新人のような扱いをされてるの?


アンディ:それはどれだけ時間が経とうとなくならないんじゃない?僕が言いたいのは、ストーンズのロニー・ウッドやビートルズのジョージ・ハリソンがそう だったみたいにってことさ。それは変わらないんだよ。つまり、馴染んでいきはするけど、その事実はいつも残ってるというか・・・昨夜そんな感じのことにつ いて誰かと話したんだよね・・・ガールフレンドと何かのことで話してて、ポール・マッカートニーとジョージ・ハリソンの話になったんだ。そしたら彼女、興味がなくなったみたいで「あな たって、ご近所さんかCoronation Streetの登場人物か何かみたいに、ビートルズのことを話すのね」と言われたんだよ。
実際僕にとっては彼らは家族みたいなものなのさ。でも、何からその話になったんだっけ。たぶんCoronation Streetのことだったかもね(笑う)。

曲を作った時、あなたが最初に披露する人は?

アンディ:ノエル。何曲か候補を渡して、ノエルが「この曲が俺達向きだと思う」と返してくるんだ。最終的にはみんなに聴いてもらう、でも曲を選ぶのはノエ ルなんだよ。ゲムとリアムは僕が作った曲なら何でも気に入ってくれるけど、ノエルの場合はもっと色んなことを考えた上で答えを返してくれるんだ。僕達って退屈するとレコーディングにとりかかるんだよね。ツアーが終わってちょっとしたオフに入ってこんな感じになると(あくびをしてみせる)、こういう風になり始める(テーブルを指先でリズミカルに叩く)。そしたらまたスタジオに入ってデモを作り始めるのさ。

曲を書く時に、ヴォーカルとして思い描くのはやはりリアム?

アンディ:うん、僕の曲はノエルの歌い方に合わないと思うんだ。リアムがOASISの声であるのに対して、ノエルは、何かみんなに対して訴えたい時、自分で自分の曲を作って歌うのさ。何も、ノエルは僕の曲を歌っちゃいけないと言ってるわけじゃない。つまり、「Thank You For The Good Times」でもそうだったように、リアムが歌い方を覚えるまで、ノエルが見本を見せるって感じさ。そうやって出来た曲なんだよ。これはノエルが作った曲 に関しても同じだね。リアムがマスターするまで、ノエルが歌うという役割分担があって、最終的に誰がヴォーカルを取るか決めるんだ。

今回のあなたの曲に感じられる哲学的なテーマは、何にインスパイアされたものなのでしょう。

アンディ:あえて言えば自分自身かな。でも僕がいつもあんな感じってわけじゃないよ。時にはそうなる時もあるってこと。他にも何曲かユーモラスな曲も書いたんだけど、今回のOASISの方向性にはそぐわなかったのさ!(笑う)。

ビートルズの「Maxwell’s Silver Hammer」みたいなテイストの曲?

アンディ:ううん、そこまで悪くはなかった!(笑う)。60年代半ばのストーンズをおふざけでやったような曲というかな。「Nature Of Reality」は、僕が本当に哲学的に物事を考えていた頃に書いた曲なんだ。というのも色んな理由でセラピーを受けていてね。だからいくつかの歌詞には、僕の人生観が現れてると思う。

とても思い入れの強い曲なんですね。その内容についてリアムと頭を突きあわせて話し合ったりした?

アンディ:それはないね、リアムの好きなようにやってもらった。だって何について書いてあるかは読めば明らかだろう、とてもストレートな内容だ。詩的な回りくどい表現は使ってない。歌詞のままに取ってもらって良いんだよ。

ノエルの曲に関しても言えることなんですが、今回のアルバムは聖書を思わせる表現が多数見受けられますね。

アンディ:うん、面白い。今回はどの曲もそれをテーマにしてるみたいだ。

人生の意味について考えたことはありますか?

アンディ:ああ、人生ってひどいもんだよね。

でも神のように崇めていた人物とバンドメンバーになれたとしたら、そうでもないのでは?

アンディ:(笑って)そう、それはリアムを信じるかどうかによるよね!僕は、リアムを信じてる。リアム・ギャラガーに対して、僕は不可知論者の立場をとってるんだけど、今の段階では、彼はこの世に存在すると考えてるよ。

OASISはステージ上で静止したように立っていますよね。バンド内で暗黙のルールでもあるんですか?

アンディ:うん、僕達の間で言う「静止主義」さ。リアムが発案したんだ。あれが彼の「動き」なんだよ。でも僕は静止してないよ!ステージ中を動き回ってる。グルーヴを感じてるというかな、なんたって僕はベースプレイヤーだから!メンバー全員が動きを感じてるよ。リアムはステージ中央で仁王立ちすることを主義としている。ノエルは同じ場所にとどまる。ペダルを操作したりマイクに向かって歌う必要があるからね。でも僕の場合はちょっとは動いてるよ。ダンスだってしてる。ジャスティン・ティンバーレイクと同じまでとは言わないけど、僕だって動いてはいるんだ。

OASISのベースプレイヤーというのは、あなたの望んだ位置なのでしょうか?

アンディ:そうさ、最高だよ。望んだ以上だ。だって当時はセッションプレイヤーになる準備を進めていたのに、それが今じゃOASISのメンバーだろう。 OASISはセッションプレイヤー集団じゃない、バンドメンバーと呼べるコアな人間の集まりなんだ。本当に運が良かったよ。それだからOASISはこれだ け長いこと続いてきたと思うしね。今ではオリジナルメンバーのギグジーよりも長くこのバンドにいることになるから、変な気分さ。OASISはあの時期を境に違ったバンドになったんだから。 そうだろう。まるで違うバンドを見てるみたいなんだ。よく「良き時代」と「悪しき時代」と言うけど、(笑って)それとは違った見方をしたいんだよね!「Heathen Chemistry」から現在までが、僕達にとってのアルバムなんだと思う。五里霧中の状態からスタートしてスタイルを確立したのさ。前までのOASISが、衝撃的にデビューしたはいいけどちょっと尻すぼみに終わったのとは違うっていうかな。

アティテュードを持ったOASISは、自らの音楽を作り上げることができたということ?

アンディ:そうだね、今も進化してるよ。OASISが新たな方向へ進化したと認識してくれて嬉しく感じるよ。復活が歓迎されない場合だってありえたんだから。でも今は前とは違うバンドの姿を見せることができてると思う。まるで・・・僕はストーンズが好きなんだけど、彼らの場合、結成初期はブルースを基本とした音楽でやっていこうとして、8年間良いアルバムを作れなかったんだ。それに対してOASISは、デビュー当初から素晴らしいアルバムを3枚立て続けにリリースした。でも僕達が加わってからは---こう言おうか---僕達が バンドに、そしてみんなが僕とゲムに慣れるまで、あやふやな時期が続いたんだ。新しいメンバーの加入というのはそれだけ影響があったんだよ。だから 「Heathen Chemistry」にも、ちょっとそういう面が現れてる。でもデイヴ・サーヴィを見つけてから僕達は波に乗り始めたのさ。僕にとっては、彼はOASISのジミー・ミラー(ストーンズ初期のプロデューサー)みたいな存在なんだ。彼が加わると「Sticky Fingers」や「Let It Bleed」みたいに力の漲った作品が作れる、そういう気分になれる。それが今の僕のOASISに対する見方だな。やる気満々さ。最高の曲ばかりだ。やりたい放題というわけじゃなく、よく練られた楽曲が詰まってるんだよ。今 の僕達なら・・・次は「Exile On Main Street」ばりの作品だって作れると思うんだ。30、40曲入ったダブルアルバムだって出せちゃうよ。曲なら余るほどある。たくさんね。そのことで困 ることはない。

あなたはストーンズのファンで、リアムはビートルズのファン。趣味の違いでぶつかることはありませんか?

アンディ:あったなあ、それに関しちゃ交渉決裂さ。ビートルズも大好きだけど、僕の中ではストーンズの圧勝だ。

読者からの質問:

バンド内で一番お酒に強い人は誰ですか?ついでに、一番のへたれも教えてください。

アンディ:僕がへたれだよ。しかも酒癖の悪いへたれ。飲むのは好きだし、テキーラも好きなんだけど、酔うと自分を透明人間だと思い込んでついには・・・テーブルの下でべろべろになってやばい状態になるんだよ。一番強いメンバー?リアムは3日間余裕で飲み続けるね、でも長く飲み続けるという点で言えば、ゲムとノエルも同じくらい一晩中飲むのが好きなんだ。12時間くらいはよく飲みに行ってる。僕にそんなスタミナはないなあ。クリスはダークホースさ、僕が思うに。楽々飲み干せると思うよ。あの真っ赤な頬を見てごらんよ。あれは大酒飲みの証拠さ!(笑って)クリスごめん!

OASISで演奏して学んだことはなんですか?

アンディ:どのバンドでも同じってことがわかったよ。良いバンドは良い。バンドの価値はお金の有り無しじゃない。Ride、Hurricane #1、そしてOASIS、この3つが僕が経験してきたバンドだ。鳥瞰してみると、どのバンドにも共通していえることなんだよ。担当する楽器がギターからベースに変わったことで、多くのことを学ぶことができた。人間としても成長できたし、楽器ごとの役割についても学ぶところは多いんだよね。ベースプレイヤーは、ギタリストよりもたくさんの役目を担っていると思うんだ。今でも自分はギタリストだと思ってるし、いつも弾いてる楽器はギターだし、レコードでも許される時はギターを弾いてるけど、それでもベースプレイヤーというあり方が僕にはあってると思うんだ。2人の子供を持つ落ち着いた生活を送る38歳の男として、僕はベースプレイヤーにぴったりなんだよ。みんなすぐにベースをやめたがるけど、僕は・・・

故ジョン・エントウィッスル(ザ・フーのベーシスト)に捧げたい言葉ですね!

アンディ:ああ、本当にね・・・いつかハードロックカフェでエントウィッスルみたくベースを弾いてる日が来るかも、たぶん。でも晩年にすることってそうい うことじゃないのかな。若い頃に好き勝手やって、一旦落ち着いて、そして子供たちが大きくなったら、また昔みたいに好きなことをするのさ。だからそう、自分の可能性をせばめるようなことはしないよ。